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高齢者の交通事故について

10月28日神奈川県で高齢者の運転する車の起こした事故により小学生が死亡した。

その二日前の10月26日には愛知県でポケモンGOをプレイ中のトラックが小学生を跳ねて死亡させるという事故があったこともあり、社会的反響が大きくなっている。

この2つの事故は通学、もしくは下校中の小学生が、歩道上、あるいは横断歩道上という本来歩行者が保護されて当然の場所を歩いていたにも関わらず事故の被害者になったという点で類似性がある一方で、原因ということで言えば認知症の疑いのある高齢者と携帯電話でのゲームということで違うもあり、微妙に絡みながら、一方で別々の話題としての側面もあり、報道などではどちらかと言えばそれぞれの問題として取り上げられているような印象がある。

このうち神奈川の事故以降も相次いでいる高齢者の事故については75歳以上は運転をやめるべきとか、免許更新を1年ごとにすべきであるとか、高齢者の運転を規制する方向性での議論が多くなされているような印象がある。

平成27年中は4117人の交通事故死者のうち2247人と半数以上が65歳以上だったということについてはあまり触れられていない。

ちなみに、同じく平成27年中の交通死亡事故のうち65歳以上の高齢者が第一原因となっている事故は992件と被害者に比べると圧倒的に少ない。

これは高齢者は交通事故に遭遇した場合に、報道されているように第一原因になることが年間に1000件くらいあるかもしれないが、それ以上に第一原因ではない自由により交通事故の被害者になる人が多いということである。

そのことを忘れて安易に高齢者の運転をやめるべきであるとか、自動車の運転から遠ざけるような方策は、果たして正しいだろうか?

例えば、高齢者に対しての運転条件を厳しくすることによって、高齢者が運転をやめて徒歩や自転車により移動するようになった場合に、その人たちが負うリスクというのは高まったりはしないだろうか?

人間はどうしても高齢になると足腰は衰えてくるし、体も動くが遅く、骨はもろく、様々なダメージに対して弱くなりがちである。

そのため他の年代と比較して、道路横断中に自動車が接近していることに気が付いたとしても逃げることができず、あるいは事故に遭遇した時にも受け身をとることもできずに、結果ケガが重傷になったり、死亡に至ることがある。

自動車の運転をやめて徒歩や自転車などの移動を促進するということは、高齢者に対してそういうリスクを背負わせることに繋がるものであることを認識すべきであるし、本来であれば運転が十分に可能であるのに、運転をやめさせるということは結果的に事故発生のリスクを高める可能性があるということには気を配るべきではないかと考える。

では、高齢者事故を防ぐためにはどうすれば良いのか、ということだ。

これには特効薬はないと思われるが、取り組んでいく方向性はいくつかあるだろう。

1つは来年から施行される改正道路交通法では認知機能検査が強化されるが、そのような運転をしてもよいのか、やめるべきなのかというスクリーニング機能を強化することである。

運転をするリスクというのが一定程度高まれば、それはやはり運転を継続できないような方策を取るというのは必要だろう。

もう1つは公共交通やタクシー乗車に対する公費補助とライドシェア事業の導入などだろう。

高齢者に限らないが自動車を運転する理由は、個人的な用事である場合は、移動目的というのが大半だ。

もちろん、荷物の運搬やドライブを楽しむとか、自動車の整備のためとかもあるだろうが、大半は何かの用事などで移動するためであり、そうであれば自動車を運転する以外の方法により移動できるのであれば、自動車がなくても困る場面は、それだけ少なくなるわけで自動車の運転から公共交通などへの転換やライドシェアの解禁などは、高齢者事故の解決策になる可能性は高いだろう。

そして、これが本命だと思うのだが高齢運転者に対する衝突被害軽減ブレーキなどの予防安全機能の普及促進である。

高齢者事故というのは認知機能の低下に起因する事故が多いが、一方で車両のスピードということで言えば他の年代に比べれば低く、比較的遅いスピードで走行している。

これに対して予防安全機能については、速度域が遅いほうが効果が高くJNCAPが公開している評価を見ても明らかである。

特に、性能の高い衝突被害軽減ブレーキなどは時速50キロからでも車両でも、歩行者でも停止することができる機能を備えており、これを高齢者に普及させることができれば事故防止には劇的に効果を発揮するだろう。。

また、運転中に病気などが発症した場合などにも、これらの機能は有効であると思われる。

例えば高齢者が自動車を買い替える場合には補助金を出すなども政策としてはあり得るのではないかと思うし、エコカー減税を予防安全機能減税にすることだって国民の命を守るという点で言えば十分にありではないだろうか。

 

それから、もう1つ高齢者事故で気になることが1つある。

これはアクセルとブレーキの踏み間違え事故に関してのことであるのだけれども、これらの事故についてはコンパクトカーや軽自動車が多いというのが気になる。

もちろん、最近は車のダウンサイジングが進んでおり高齢者がそれらの車両を運転していることが多いということはあるだろうけれども、それだけではないのではないかと思う。

というのは、これらの車というのは様々な制約があってドライビングポジションが最適な位置には設定しにくいし、アクセルとブレーキの位置関係も本来の理想からは遠い位置にあることが多い。

今の車はクラッチAT車が大半であるのでペダルはアクセルとブレーキだが、どちらのほうが踏みやすい位置にあるべきかと言えば、それはもちろんブレーキだ。

それぞれのペダルの形を知っている人であれば思い出してもらえればわかるだろうし、もし見る機会があれば見てもらいたいのだけれど、アクセルは細くて、ブレーキは横に広い形状になっているのが普通である。

これはブレーキは踏み間違えると事故に直結するために、幅を広くして少しくらい踏む位置がずれたとしてもブレーキを踏み込むことができるようにするためだ。

しかし、緊急時にブレーキを踏み込むためには、形状以前にブレーキが右足で踏み込みやすい位置にブレーキがなくてはならない。

もし、ブレーキが右足から遠く左に寄っていたら、慌てて踏み込もうと思っても踏むのは難しい。

結果として、そのあたりにあるペダルを踏み込もうとすると、それはアクセルであり車を止めるつもりでいるのに急加速していき、パニックになって、さらにペダルを踏み込むために結果として衝突するまで車は止まることができない。

これが踏み間違い事故の原因として、かなりの部分を占めているはずだ。

もちろん、その踏み間違いが生じる可能性というのは車の中での運転席の場所やアクセル、ブレーキの配置によるし、それはメーカーや車種ごとに違っているが、踏み間違いを起こしやすい車を作っているメーカーもいれば、そうではないメーカーもいる。

上で触れた衝突被害軽減ブレーキも標準装備化して推進を図るメーカーもいれば、そうではないメーカーもいる。

そういう安全思想の違いというのが残念ながら今の日本ではあまり評価されていないというのが現実のように感じる。

と、そんなことを思っていたところで吉報が入ってきた。

アイサイト3だけではなく、歩行者エアバックまでも標準装備としたスバルのインプレッサが今年の日本カーオブザイヤーを獲得したという。

もちろん、安全性だけが評価されたわけではないだろうけれども200万円前後という比較的、自動車としては低価格帯に位置する車両でありながらも、安全に対して極めて高い基準を設けた車が評価されたことは、今後に向けて大きな一歩になることを期待したい。