三菱の燃費問題

三菱自動車の燃費問題が、補償金の発表と国土交通省による燃費データの好評があり、再び話題になっている。

その発表のタイミングが補償金が先にあって、それから燃費データという順番は非常に筋の悪さを感じる。
何しろ補償金が、これですと言って出した金額が妥当であるのかは、燃費データを見てから判断できるはずなのに先に金額を出してしまって、それから後に検証データが出てくるわけなのだから、順番として逆である。
というわけで、実際に国土交通省が発表したデータを見てみよう。
 
ニュースサイトでもないので、全ての数字を羅列することはやめて、ekワゴンとekスペースのそれぞれ1グレードに登場してもらう。
ekワゴンについて初期グレードで最も燃費の良いG
ekスペースについても初期グレードで最も燃費の良いE/G/カスタムG
このグレードで見るとekワゴンは1リットル当たり29.2kmと発表されていたのが、今回の国土交通省の発表では26.8km。
同じくekスペースでは26.0kmが22.0kmとなっている。
その他のグレードで見ても似た傾向にあるがekワゴンでは5-10%、ekスペースでは15%前後、新しく発表された数値では燃費が悪化している。
 
それでは、実際にこの燃費の違いがユーザーにどのくらいの影響を与えるのか考えてみたい。
と言ってもユーザーに対する負担の大半はガソリン代である。
航続距離が短くなるということや騙されていたということへの精神的なダメージというのはあるかもしれないが、これはそれほど大きな影響ではないだろう。
また、中古の価格が下がるということもあるかもしれないが、これについても商品の価値という点では燃費の部分に行き着く。
もちろん、ブランドが毀損したということもあるのだが、これは定量的に評価しにくいため、ひとまず保留とする(実際には中古車の相場を見ればわかると思われるが、これはオークションのデータ等がある中古車販売業者でないと、なかなか分からないだろう)
というわけで単純に購入した車両を10万km乗るとした場合のガソリン代の負担額の違いを計算してみたい。
 
まず、ekワゴンの場合だ。
当初の三菱の公表値であれば10万km走行した場合のガソリン消費量は3435リットル(小数点以下四捨五入、以下も同様)であるはずが、新しく発表された数字で計算すると3731リットルとなり、その差は296リットルとなる。
ガソリン価格については時期により違うために一概には言えないが、資源エネルギー庁が発表している直近の全国平均のレギュラーガソリン価格である123.6円を使うと3万6586円ということになる。
 
同じ計算をekスペースでしてみると
公表値でのガソリン消費量は3846リットル。
国土交通省発表の燃費数値では4545リットル。
その差は699リットル。
これにガソリン価格を乗じると8万6396円となる。
 
このように見ると、いずれも三菱自動車が発表した10万円という補償額の範囲内に収まっているので一見、問題ないように見える。
しかも、資源エネルギー庁が発表しているガソリン価格はフルサービスも含むのでガソリン価格を意識してセルフを利用していれば、もう少し安く済む可能性はあるだろう。
ただ、ここで注意しなくてはいけないのは走行距離を10万キロと過程していることだ。
もちろん、軽自動車は走行距離が短い傾向にあるため10万キロ以内で廃車とされる車も少なくはないだろうが、実際にはもっと走行することも可能である。
タクシーのように30万キロや50万キロも走るということはほとんどないだろうが15万キロくらい走行する人もいるだろう。
そうするとekスペースのユーザーの損失額は上記計算の1.5倍となるため12万9594円ということになる。
 
また、一律3万円とされた軽自動車4車種以外の車両についてはどうだろう?
例えばアウトランダーの旧モデル。
発売当初のモデルは燃費は1リットル当たり11.6kmと公表されていた。
仮に、これが2%程度公表値とくらべて実際は悪かったということであれば、上記の計算をすれば10万キロの時点では確かに損失は3万円以内に収まる。
しかし、それでも14万キロ以上走行した場合には損失は3万円を超えるし、燃費の不正が3%以上であれば10万キロであっても損失額は3万円を超えてしまう計算になる。
もし、仮に燃費不正が10%も違っていたとすると10万キロ走行時の損失額は11万円を超える計算になる。
もちろん、新車をすでに製造していないため実際にどの程度の損失が発生しているのかは検証しようがないが、軽自動車に比べて燃費が悪く、一方で走行距離が長い車両ではより大きく燃費不正の影響が出ることを考えると、3万円という金額の根拠については理解することが難しい。
もちろん、不正と言っても軽自動車ほどひどいものではなく、あってもその差は1%程度だったというのであれば、測定誤差の範囲内ということになるのだろうが、そうであるかどうかの根拠は示されていないので分からない。

 

この問題が、今後どのような展開になっていくかは分からない。
三菱自動車が発表した金額でユーザーの大半が納得して粛々と支払いが進んでいくという可能性もあるし、納得行かないという声が大きくなり、見直しを迫られるという可能性もあるのではないかと思う。
うちも三菱車を保有しているので、この問題の行方は気になるところである。
三菱自動車の闇 スリーダイヤ腐蝕の源流

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