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ポリアの思考術

今年は本を50冊読もうという目標を持ってスタートした。

そんな今年の一冊目に読んだ本が丸善出版の「数学×思考=さっくりと いかにして問題をとくか」だ。

これを最初に一冊にしたのには特に意味はなくて、今までに積ん読になっていた本の中では比較的読みやすかったので、たまたま読んだというだけである。

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と、そんな読んだ経緯はともかくとして、さて本の内容だ。

この本は数学者のポリアが記した「いかにして問題を解くか」という著作に記されたポリアの教えエッセンスを抽出して一般向けに記されたものだ。

ポリアの教えは25箇条からなっており、物事を論理的かつ効果的に解決していくための物事の見方をしたものであるが、残念ながらその文章を読んだだけでは分かりにくいものもある。

例えば問題解決のためのステップ1の3は「適当な記号を導入して図を書いてみよう」となっている。

数学の教養のある人なら、ウンウンと頷くかもしれないが、その人達を除けば何がなにやらということになりかねない。

その他の教えもそんな調子で、少し分かりにくいポリアの教えを噛み砕いて教えてくれるのがこの本である。

例えばポリアの教えのステップ1の4「条件の各部分を分離してみよう」では「ある都市にピアノの調律師は何人いるか?」という問題を題材にして解説している。

はて、そんな問題を解いて何か意味があるのだろうか?、ともしかしたら思う人がいるかもしれないけれども、ビジネスをしていく上で、この商売において潜在顧客がどのくらいいるのだろうかとか、実質的な競合相手がどのくらいいるのであろうかなどという問題に対して、はっきりした数字がない中で挑戦していかなくてはならない場面は決して少なくないはずだ。

しかも、そんなはっきりしない状況でありながらも、例えば推定する潜在顧客の数が10万人である場合と100万人である場合には販売予測やプロモーションの展開など全く違う予想になってしまう。

従って、一見数学的に見える予測の問題であっても、実はビジネスでも教育でも政治的な活動でも、重要なものだということが分かると思う。

とは言えデータのはっきりしない状況では完璧に見積もるということは困難である。

しかし、完璧な見積もりはできないにしても、概ね誤差の範囲を桁が違わない程度で推測することができれば十分に有効であるし、そのためにはどのようにすれば良いのかというのがこの問題に要点で、これは「フェルミ推定」と言われている。

この問題を解くには専門的な数学的な知識は必要ないし、推定するための計算も難しくはない。

ただし、考え方を理解している必要がある。

さて、問題のピアノの調律師の数というのは、その都市における人口とその住民がピアノを持っている割合、そしてそのピアノが一年で何回調律が必要とされるのかということ。

これが分かれば一年間のピアノ調律の需要があるのかが判明する。

そして、その需要に対して調律師が何人いれば需要が足りるのか、ということを考えると調律師の人数が推定できる。

これらの予測に用いるデータは、都市の人口は統計データで明らかであるし、ピアノの普及率はある程度の推計でも大雑把には間違えないだろう。

細かく知りたければピアノの販売データと廃棄データからおおよその予想が付く。

ピアノの調律が年に何回必要で、1人の調律師が年に何件ほどの調律がこなせるかは経験がないと分からないが、これはピアノの調律師か、ピアノを所有している人にインダビューすれば分かるだろう。

こうして集めたデータがあれば、特に数学の教養がなくても、ある年におけるピアノの調律師の人数を求めることが出来るわけだ。

本の中では、もうちょっとざっくりとした人数を計算によって求めているが、いずれにしても概数を推測するということでは、役に立つ考え方だろう。

こうやってポリアの教えの幾つかについて、ざっくりと考えることによってでも、概ねの数字の大きさや考える方向性が分かるんだよ、というのが本書の要点だ。

そんな風にして数学などに馴染みのない人であっても、色んな値の推計などができるようになるということが書いてある。

現代はコンピューターが発達して様々なデータを集積することがどんどん容易になってきていて、その集めたデータから何が見えてくるのかを考えるのが人間の仕事になってきている。

そういう時代には情報処理のスピードではなくて、方向性を見つけることが重要であり、それを身につけるためにはこういう本でデータをどのように見れば良いのか知ることは一助になるのではないかと思う。

 

数学×思考=ざっくりと  いかにして問題をとくか

数学×思考=ざっくりと いかにして問題をとくか